第5章

45/178
前へ
/599ページ
次へ
「圭太の前ではちょっと可愛こぶってたけど、本当は好きよ」 「ビール飲まないのが可愛こぶるになるのか?」 「そりゃ、好きな人の前でビール煽ってプハーなんて出来る訳ないじゃない」 「そうなんだ?」 「そうなのよ?私も若かったしねー」 「今も充分若いだろ」 沙織はありがと笑うと、残りを一気に飲み干した。新しく生ビールを注文する沙織に苦笑を浮かべ、圭太は卵焼きを口に放り込む。 「ねぇ、圭太」 その声に顔を上げると、酷く真剣な顔をした沙織が圭太を見ていた。その様子に気圧されたように圭太は少し身を引いた。 「・・・沙織?」 「話があるの」 「ああ、この前も言ってたよな。なんだ?」 話を促すと、沙織はほんの少しだけ躊躇する素振りを見せたあと、あのねと言葉を紡ぐ。 「・・・本気なの?」 探るような目を向ける沙織に「何がだ?」と訊ねた。 「うん、今付き合ってる人と・・・本気で付き合ってるの?」 「本気で付き合ってる。俺は冗談で男と付き合う趣味はない」 圭太がキッパリと言い切ると、沙織は視線を逸らし、そうよねと呟いた。 「風太は知ってるの?」 圭太は修也との関係を匂わすような発言をした風太を思い浮かべた。 「どうだろうな。話してはいないが、多分勘付いてるんじゃないかな。まだ小さいからか分からないが、普通に受け止めてるぽいがな」 「周りの人は?」 「周り?」 「そう・・・圭太のご両親や智花ちゃん」 「知らない」 「・・・伝えるの?」 何を聞き出そうとしているのか、話の真意が分からず、圭太は怪訝な顔を向けた。
/599ページ

最初のコメントを投稿しよう!

419人が本棚に入れています
本棚に追加