第5章

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「何でそんなことを訊きたがる?話があるんじゃなかったのか?それがお前の話なのか?」 「・・・関係してくるから圭太の本音が聞きたかったの」 「俺の本音?」 「そう。今付き合ってる人と、ずっと付き合って行くつもりなの?」 「ああ、そのつもりだが?」 「本気で言ってるの?本当にそんなことが可能だと思っているの?」 「・・・何が言いたい?」 意味が分からないと圭太は眉を顰めた。 「ここは日本で男同士の結婚は認められてない。そう言った恋愛に理解を示してくれる人は一握りしかいない現状で、あなたが偏見や差別を受ける分には構わないけど、風太までそんな目に合ったらどうするつもりなの?あの子は圭太の子供ってだけで、何にもしていないのに、可哀想だとは思わないの?」 つまり・・・男と付き合っている俺には風太を任せられないってことか。沙織の言わんとしていることを理解し、圭太はフーーと息を吐き出した。 「風太を引き取りたいのか?」 「そういうことを言ってる訳じゃないの」 圭太の言葉を否定した沙織は「引き取りたくない訳じゃないけど」と付け足す。 「でも、違うの。引き取るとか、引き取らないとか、そんな話じゃないのよ」 否定され、そんな話じゃないと言われ、圭太は訳が分からず眉間の皺を深くした。イライラとした声で「お前何が言いたいんだよ」と睨み付けた。 「風太が俺のせいでイジメられるかもしれないから手離せって言ってんじゃねぇのかよ」 「違う」 「じゃあ、何だってんだよ」 「その人と別れてって言ってんの!」 沙織の言葉に目を丸くする。 「・・・なに、言ってんだ?」 「そのまんまよ。圭太はゲイって訳じゃないでしょ?女と普通に恋愛が出来る人なんだから男に拘る必要はないじゃない」 「男に拘ってる訳じゃない」 「だったら「俺はあいつに拘ってんだ」 沙織の言葉を遮る。 「あいつに惚れてんだ」 圭太はそう言って笑った。
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