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「私は圭太を愛してた。貴方と結婚して、風太を授かって幸せだった。でも、圭太は違ったんでしょ?毎晩、毎晩外で飲み歩いて、女作って、私のことを顧みてはくれなかったじゃない。浮気相手よりも、その辺を歩いてる見知らぬ誰かよりも、私のことは二の次だったじゃない」
「そんなことはない」
圭太の反論に、沙織は被りを振った。
「・・・嘘ばっかり・・・私が髪型変えたって何したって、気にもならなかったクセに・・・話し掛けても疲れてる、忙しいって言って、相手すらしてくれなかった。・・・圭太に振り向いて欲しくて必死だった。愛して欲しくて必死だった。でも、でも、圭太はそんな私をいつも冷めたような目で見てたじゃない。まるで、居ないかのように扱っていたじゃない」
酷く傷付いた顔で、圭太を詰る沙織を見ながら、圭太は最低だな。と、当時の自分を振り返っていた。
沙織を嫌っていた訳じゃない。でも、あの頃、話し掛けてくる沙織を煩わしいと思っていたのは事実だ。家庭よりも仕事を。妻よりも浮気相手を。圭太は何よりも優先した。そこに縛られ浸って行くのを恐れるように。男として、守って行かなければいけない責任を、仕事をして金だけ渡していれば全うしていると思っていた。
そんな筈はないのに。
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