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居酒屋を出た後、沙織と共に大通りまで歩いた。少し酔ったのか、顔を赤く染め、フラつく足取りは心許ない。
「大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫」
へらっと笑う沙織に眉を顰めた。大丈夫だという酔っ払いほど信用ならない。
「飲み過ぎだ」
「楽しいお酒だったから、つい飲み過ぎただけだもん」
「・・・楽しかったか?」
「楽しくなかった?」
窺うような目をする沙織に苦笑する。
「ワーワー泣いてたクセにか?」
「嫌なこと言うねー」
「本当のことだ」
「まぁね。・・・それでも楽しかったのよ」
にっと笑う沙織に、そうかと呟く。
「圭太に、お願いがあるんだ」
「・・・女のお願いは怖いな」
「そんな大したことじゃないのよ?」
「なんだ?」
沙織は立ち止まると、圭太を見上げる。
「これからも、こうして会ってくれないかな」
圭太は眉を顰める。それを見て沙織が慌てたように付け加える。
「別に特別な意味はないのよ?ただ、風太の様子も知りたいし、一人になって寂しいから気晴らしがしたいなって思った時、圭太ならそんなに気を遣わなくてもいいかなって、思ってね」
「・・・・」
会うことは別に構わない。そこに何らかの感情が伴わないのであれば。風太の様子を知りたいと言う沙織の気持ちも分からないではないから。
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