第5章

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「・・・ダメかな?」 「いや・・・でも、気は遣え。俺には付き合ってる奴がいるからな。あいつに変な勘繰りをさせたくない」 元嫁に早々何度も会うなんて、良い気がしないだろう。それに、嫉妬深い奴だしな。 「あ、うん。・・・それは分かってる」 沙織はそう言って視線を逸らした。 「分かってるけど・・・圭太変わったね」 「そうか?」 「うん、だって・・・前までの圭太は付き合ってる相手がいようと、結婚していようと、そんなこと気にもしなかったでしょ?」 暗に沙織にしていた心無い行動を揶揄されて、圭太はバツが悪そうに頭をかいた。 「・・・悪かったよ」 「責めてる訳じゃないの・・・やっぱり、責めてるのかな」 なんか悔しくてさと、沙織が複雑な顔で笑った。 「本当はね、特別な意味、滅茶苦茶あるんだ。この機会に、圭太を口説き落とそうと思ってたりするの」 「沙織」 咎めるように言葉を遮った。 「だったら、会うことは出来ない」 沙織は目を瞠り、くしゃりと顔を歪めた。 「・・・ああー、ムカつくな。ホントムカつく」 男に負けたと、項垂れる。 「負けたって・・・」 「だって、そうじゃない。あいつ、本当にムカつく」 「・・・相手が誰だか分かってんのか?」 「麻生修也でしょ?」 間髪入れずに返って来た答えに目を瞬いた。
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