第5章

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「・・・なんで?」 「そりゃ、調べたから?知ってますよーだ」 茶化すように言った内容に眉を顰める。 「・・・調べた?」 「そう。圭太が男と付き合ってるって聞かされて・・・気にもなるじゃない。調べたわよ」 「どうやって」 「そりゃ、調査会社使ってね」 肩を竦めて見せると「割とあっさり相手が分かって拍子抜けした」と苦笑する。 「あの男、隠してないのね。圭太も割と堂々と付き合ってるみたいだし?」 ジッと見つめてくる視線から目を逸らした。 「・・・堂々とはしてねぇよ」 覚悟を決めたと、修也には言った。自分でもそう思っていた。でも、沙織に問われた時、咄嗟に否定しようとしたことも事実だ。本当の意味で覚悟を決めていたのならば、考えもしなかった筈だ。 結局、中途半端なんだよな。そして、多分それを修也にも見透かされている。だからこそあの時、修也から『否定すりゃ良かったんだ』なんてことを言われたんだ。 あの時、突き放されたように感じた。そのことを寂しいと思った。でも、本当に寂しいと思っているのは修也なのかもしれないと、圭太は何とは無しにそう思った。
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