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「父ちゃん、じいちゃん、そんなに悪いのか?」
「・・・いや、何でだ?」
助手席に乗った風太が、神妙な顔で運転する圭太を見ていた。何でもない風を装う圭太に、風太が「父ちゃん、暗いから」とボソリと呟いた。
「おっちゃんも気にしてたぞ?父ちゃんの様子がへんだって」
その言葉に、圭太は軽く目を見張った。上手く隠せていると思っていた。それが幸也にまで何かあったのかと勘繰られていたことに驚いて、居た堪れなくなる。
「だから、じいちゃんの具合がすごい悪いのかと思ったけど・・・ちがうのか?」
圭太は逡巡した後「ああ」と答えた。
「今は落ち着いてるみたいだし、大したことはないらしい」
圭太の話に風太はホッとした顔をする。
「・・・でも、じゃあ、なんで?」
当然と言えば当然の疑問に行き当たり、風太が首を傾げた。圭太は、まさか修也に振られたからだとも言えず、誤魔化すように笑ってみせた。
「心配掛けてすまないな。・・・修也とちょっとケンカしてな。落ち込んでたんだ」
全てを嘘で塗り固めることに抵抗を感じた圭太は、ほんの少しだけ真実を織り交ぜて、圭太は風太に話した。
「しゅうやとケンカしたのか?」
「・・・ああ」
「 なんで?」
「・・・さぁ、なんでだろうな。俺にも良く分からない」
「ふーん」
風太はそう呟くと、暫く何事かを考え込む素振りを見せ、あのなと勢い良く圭太に詰め寄った。
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