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「・・・あのな?おれと奏も時々ケンカするんだ。でも、ケンカしたあとは、どっちが悪くても、どんなにムカついてても、二人一緒にごめんてあやまって直ぐに仲直りする。仲直りしたあとは、もっともっと仲良くなる。・・・父ちゃんたちも、ごめんなさいして仲直りしたら、きっともっと仲良くなれるから」
だから早く仲直りしろと、風太のその言葉に圭太は一瞬泣き出しそうに顔を歪めて「ああ、そうするよ」と頷いた。一生懸命慰めようとしてくれている風太の気持ちが嬉しかった。反面、こんな小さな子供に心配かけて、労われることが情けなく恥ずかしかった。
「・・・ありがとうな」
気恥ずかしさを誤魔化すように頭をくしゃりと撫でれば、風太が満足そうに笑い、うんと大きく頷いた。
1時間程走ると、見慣れた景色が目に入って来る。圭太は隣でキョロキョロと物珍しそうに辺りを見渡す風太に問い掛けた。
「風太はじいちゃんやばあちゃんのこと覚えてるか?」
風太は、うーんと唸りながら首を捻る。
「・・・おぼえてない」
そうか、覚えてないか。イヤな記憶は抹消されたんだな。圭太はチラリと風太を横目で見ると、頭をボリボリとかいた。
「そうか、そうだよな。・・・あのな・・・もしかしたら、ちょっと鬱陶しいと思うこともあるかもしれないけど、風太が大好きだからだと思って、優しくしてやってくれ」
圭太は自身の父親の顔を思い浮かべ、苦笑する。悪い人ではないのだ。ただ鬱陶しいだけで。
「・・・うん?」
キョトンとした顔をする風太に、いや、と呟く。
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