第5章

74/178
前へ
/599ページ
次へ
半泣きの風太と、満面の笑みを浮かべる父親と、それを暖かく眺める母親を乗せた車を見送り、圭太は疲れたとばかりち溜め息を吐いた。心の中では、風太に対し、役に立たない父親でごめんなと、散々パラ謝罪を繰り返す。 「ホント、私の周りの男って、ロクでもない奴ばっか」 隣に立つ智花の吐き捨てるようなセリフに、圭太はうっと、言葉を詰まらせる。そのロクでもない奴ばっかの中には、もちろん圭太も含まれていることは、容易に想像が付く。 「まぁ、いいわ。兄貴と二人だけで話がしたいと思っていたから、丁度いい」 強い視線に射抜かれ、圭太はそっと目を逸らした。イヤな予感しかしない。冷や汗を流す圭太の腕を逃さないとばかりに絡ませると、智花はニコリと笑う。 「さあ、行こうか」 猫撫で声を上げる智花に背筋を震わせた。 目が笑ってないんだよ。怖いだろうが。言葉は寸前で飲み込んだ。逆らえるはずもなく、顔を引き攣らせながらも圭太は、智花に唯々諾々と従った。
/599ページ

最初のコメントを投稿しよう!

419人が本棚に入れています
本棚に追加