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「はい、どうぞ」
居間のソファーに腰掛ける圭太の前に、コーヒーが置かれた。智花は、自分のコーヒーを手に持ち、正面に腰掛けた。
「ありがとな」
礼を言い、ミルクを垂らす。スプーンでかき混ぜ、チラリと目線を上げて、コーヒーカップに息を吹きかける智花の様子を窺った。
智花は沙織と繋がっているはずだ。だとしたら、修也とのことだろう。そこまで考えて、圭太は小さく息を吐いた。
今はまだ、修也とのことを突っ込まれたくない。別れ話を切り出されたのは、つい何時間か前だ。修也とのことを、冷静に誰かに話をする自信がなかった。感情に任せて自分が何を口走ってしまうのか分からなかったから、そっとしておいて欲しいっていうのが、今の心境だ。
だが、そんな圭太の気持ちや状況を知らない智花は、無情にも修也とのことを問い質して来た。
「兄貴、男と付き合ってるんだって?」
やっぱり来たか。圭太は、はぁーと大仰に溜め息を吐き出した。
「・・・沙織か?」
「うん」
智花は出どころを素直に吐いた。隠すつもりもないのだろう。
「本気なの?」
じっと見つめる視線は、圭太の真意を探っている。
「・・・俺はな」
微妙な言い回しになったのは、別れ話のせいだ。
「それは・・・相手は違うってこと?」
微妙な言い回しに気付いた智花は眉を上げた。
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