第5章

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「・・・お前には関係のない話だ」 突き放すように言えば、関係はあるでしょと返された。 「個人の恋愛だから関係ないは、一般的な男女の恋愛に於いてのみ有効な言葉だからね・・・あっ、でもドロドロとかぐちゃぐちゃとかじゃないやつね」 嫌味な口調と笑みを浮かべた智花を憮然と見る。そんな圭太を気にする素振りも見せず、智花は続けた。 「まあ?私は結婚する気はないから、旦那様になる相手や、その家族や親戚が、そのことをどんな風に感じるとか、考えるとか、気にすることはないけど?今時の人ならともかく、父さんくらいの年代の人は、きっと嫌悪感を抱くでしょうね」 「・・・何が言いたい?」 「あれ?言いたいこと伝わってない?」 おかしいなぁと肩を竦める智花を睨んだ。 「まどろっこしい言い方をしてんじゃねぇよ」 「・・・じゃあ、言わせて貰うけど。父さんにこれ以上、迷惑掛けんじゃないわよ。ただでさえ、兄貴の離婚の時の騒動で、父さん立場が悪くなってんのに、この上、男と付き合ってるなんて知れたら、父さん今の役職を解かれて降格させられるかもしれないでしょ?」 「バカバカしい」 父親は、以前圭太が働いていた職場とは全く繋がりがないはずだ。大体、あれでも仕事は出来るのか、専務として会社に取って重要な位置に居る男なのだ。たかだか息子が離婚したことくらいで、男と付き合っているってことくらいで、揺らいだりはしないだろう。 そんな圭太の思考を読み取ったかのように、智花は「知らないのは兄貴だけだから」と意味深に突っ込んだ。
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