第5章

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「会社や人の、横の繋がりをナメんじゃないわよ?父さんの会社の社長の友人が、兄貴の会社の社長だって知ってた?話の愚痴で兄貴の話になって、父さんかなり居心地の悪い思いをしたんだよ?寄りにも寄って手を出しちゃいけない相手に手を出して、余りにも考えなしでしょ。娘を傷物にされた父親が、その怒りを父さんに向けるのは、至極当然なんじゃないの?」 親の躾うんぬんを悪し様に言われたっておかしくないでしょ?その言葉に圭太は言葉を失った。 「一応、社長さんの取りなしで事なきを得たけど、今度こんなことがあったら、社長さんだって庇いきれないじゃない。会社の重役の息子が、男と付き合ってるなんて充分スキャンダラスな話だし、あの年代の人に理解されるとも思わないけど?」 いちいち最もな話に、圭太は項垂れるしかなかった。反論はある。人を好きになっただけだ。その相手が、たまたま男だっただけで、どうしてそんなに偏見をもたれて攻撃されなきゃいけないんだ。成人して親の手を離れた息子の恋の相手に、他人が口を挟むこと自体間違ってるだろうが。・・・浮かぶ言葉は全て飲み込んだ。 沙織には風太がイジメられたらどうするんだと責められ、智花には父親に迷惑を掛けるなと責められた。恋しい相手には振られ、圭太は色んな意味で最早一杯一杯で、心が限界を迎えそうだった。
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