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「特に、今は父さんの体調も万全じゃないからさ、これ以上負担を掛けないで欲しいのよね」
圭太は、先ほど会話を交わした父親を思い浮かべ、怪訝な顔をした。
「元気そうに見えたが、違うのか?」
圭太の疑問に、智花はあーと声を上げて苦笑した。
「あれ、カラ元気だから。父さん、兄貴達が来る30分前まで、点滴して布団の上で唸ってたからね」
圭太は眉根を寄せ「おい」と低い声を上げた。
「そんな状態で出掛けさせたのか?車運転してたぞ?危ないじゃねぇか」
「言って聞く人じゃないのは兄貴だって知ってるでしょ?」
「そういう問題じゃねぇだろ」
その言葉に文句を言う圭太を遮る。
「大丈夫よ、母さんも付いてるし、父さんも可愛い孫乗せてるんだもの、無茶はしないわよ」
「車運転してる時点で無茶だろうが」
眦を釣り上げ怒りを露わにする圭太を、智花はじっと見つめた。その目に、圭太は我に返り「何だよ」と呟いた。
「いや、兄貴も父親なんだなって思ってね。沙織さんから色々話は聞いてたし、結婚してる時の風太に対する態度も見てたから・・・心配だったんだよね。もしかしたら、ネグレクトしてんじゃないかって・・・だから、真剣に怒る兄貴見て安心したよ」
智花はそう言うと、ニコリと笑った。
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