第5章

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微妙な空気を誤魔化すように圭太は、コホンと一つ咳払いをした。 「まぁ、なんだ・・・心配掛けてばかりで、悪かったな」 「・・・そこを、謝るんだ?」 含みのある声音で問われた圭太は「今の発言は言い過ぎた。悪かったな」と素直に非を認めた。 「でもな、俺はお前の性格は嫌いじゃねぇぞ?普通は相手を傷付けるかもしれないって、惑って言わないだろうことをズバズバと指摘するところも、女としては終わってんだろう言葉遣いや尊大な態度も、お前らしくて好きだぞ?」 「うん、兄貴の気持ちは分かったから。ちょっと黙ろうか」 決して褒めてはいないよね?そう言って睨み付ける智花に、褒めてるだろと、圭太は言い募った。それに対して、かなり複雑な顔をする智花は、まぁ、いいけどねと、諦めたように溜め息を吐き出した。 「兄貴が私をどう見てるのか分かって嬉しいよ。そんな兄貴に、私もちょっと素直になって、謝っちゃおうかなって思ってるんだけど」 智花がにっと笑う。 「・・・何をだ?」 「色々と嘘付いちゃったからさ。本当は、そのまま惚けとこうかと思ったんだけどね」 「・・・嘘?」 「そうそう」 その言葉に、圭太はさっき目にした父親を思い浮かべた。 「・・・父さんのことか?」 智花は驚いたように目を瞠った。 「良く分かったねー」 「・・・倒れたってのが嘘だな?」 顔色も良く、元気に風太を構っていた父親が、30分前まで点滴を受けながら床に臥せっていたとは到底思えない。 「あ、それはホント」 微妙に嘘が混じってるけどね。イタズラがバレた子供のように、智花が笑った。
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