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微妙な空気を誤魔化すように圭太は、コホンと一つ咳払いをした。
「まぁ、なんだ・・・心配掛けてばかりで、悪かったな」
「・・・そこを、謝るんだ?」
含みのある声音で問われた圭太は「今の発言は言い過ぎた。悪かったな」と素直に非を認めた。
「でもな、俺はお前の性格は嫌いじゃねぇぞ?普通は相手を傷付けるかもしれないって、惑って言わないだろうことをズバズバと指摘するところも、女としては終わってんだろう言葉遣いや尊大な態度も、お前らしくて好きだぞ?」
「うん、兄貴の気持ちは分かったから。ちょっと黙ろうか」
決して褒めてはいないよね?そう言って睨み付ける智花に、褒めてるだろと、圭太は言い募った。それに対して、かなり複雑な顔をする智花は、まぁ、いいけどねと、諦めたように溜め息を吐き出した。
「兄貴が私をどう見てるのか分かって嬉しいよ。そんな兄貴に、私もちょっと素直になって、謝っちゃおうかなって思ってるんだけど」
智花がにっと笑う。
「・・・何をだ?」
「色々と嘘付いちゃったからさ。本当は、そのまま惚けとこうかと思ったんだけどね」
「・・・嘘?」
「そうそう」
その言葉に、圭太はさっき目にした父親を思い浮かべた。
「・・・父さんのことか?」
智花は驚いたように目を瞠った。
「良く分かったねー」
「・・・倒れたってのが嘘だな?」
顔色も良く、元気に風太を構っていた父親が、30分前まで点滴を受けながら床に臥せっていたとは到底思えない。
「あ、それはホント」
微妙に嘘が混じってるけどね。イタズラがバレた子供のように、智花が笑った。
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