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「時期と場所が違うだけで、本当に倒れたのよ」
「時期と場所?」
「うん」
そう言って智花は一年前に父親が倒れたのだと話した。丁度、仕事で厄介な案件を抱え込み、寝る間を惜しんで働いた父親は、仕事が片付きホッとして気が緩んだのか、会議中に倒れて救急車で病院に運ばれたらしい。
「1週間ばかし入院して検査した結果、ただの過労と睡眠不足だって分かったんだけどね。その時に父さん、風太に会いたい会いたいを連発してね、うるさかったんだよ」
「なんで、その時に連絡して来なかったんだ?」
何故、今なんだと、圭太は眉を顰めた。
「会いたいって言うくせに、絶対連絡するなって、父さんが言い張ってね。私も何となく蟠りがあって、連絡し難かったし、母さんにも父さんはただの過労だったんだから、変に連絡して心配掛けたらいけないからって、止められたんだ」
「・・・なんだそれ」
「兄貴には兄貴の生活があって、風太を育てる為に必死になって頑張ってるんだから、だいじに至らなかったんだから、今はもうちょっと、そっとしといてあげましょうって、母さんがね」
それにと、智花が続ける。
「父さんも意固地になってしまってるから、それが緩和されるまで待った方がいいって・・・そんなに時間は掛からないだろうからってさ」
智花の言葉に、ハァと溜め息を吐いた。
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