第5章

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「俺だって男だ。プライドの一つは二つあるんだよ」 「そんなしょーもないもの、今直ぐ捨てれば?顔も良い、性格も良い、料理も上手いし、最高に良い女じゃない。かなりモテるのよ?引く手数多なのよ?・・・知ってるとは思うけど。そんな沙織さんが、散々無体な真似をして来て、旦那としても男としても最低最悪な兄貴がいいって言ってんだから、兄貴も覚悟を決めて受け止めるべきだと思うけど?・・・前の結婚生活では傷付けたんだから、今度は幸せにして上げてよ」 兄貴にしか出来ないんだから。智花の呟きから逃げるように、圭太は顔を背け立ち上がった。 「疲れたから休む」 「・・・・」 まだ言い足りない。そんな顔を向けて来る智花を視線で黙らせた。 「部屋はそのままか?」 「・・・あ、うん」 返事を返す智花に頷き、リビングを後にした。 二階にある自室に入り、変わらない部屋の様子を見渡した。壁に添うように置かれたベッド。その前にある本棚。少し間隔を空けて置いてある勉強机。向かって左には収納スペースがあり、タンスも置かれている。窓が開けられ、カーテンがはためいていた。 涼しげな風を顔に受けながら、圭太はベッドにもたれるように座り込む。 先ほど、智花と交わした会話や修也との遣り取りを思い出し、重い溜め息を吐き出した。
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