第5章

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言わんとしていることが分からない訳ではない。智花の遠慮のない物言いの中からも『気遣い』やら『心配』が伝わって来た。 男同士の恋愛に未来はない。確かにそうかもしれない。結婚出来る訳ではない。子供を成す訳でもない。世間の風当たりは強く、行く先は困難ばかりだろう。 でも、男女間の恋愛にだって、未来はあるのだろうか。確かに結婚が可能で、子供を成すことも出来る。だが世間的に認められているからと言って、未来があると考えるのはおかしな話だ。 その証拠に離婚を選択する夫婦は年々増加しているじゃないか。そう考えたら、異性とか同性とか関係ない。生涯お互いを尊重したり、想い合える相手を見つけられるかどうかなのだから、その相手は俺は修也だと思ったらいけないのか? 屁理屈だと智花が聞いたら反論されるだろうことを、圭太は座り込み考えていた。 不意に、修也の声が聞きたくなった。スマホを取り出し、暫く見つめたまま電話をする理由を探した。そうしなければ電話も出来ない。臆病になる自分が情けなくて、自嘲した。 仕事の進捗状況を聞けばいい。暫く帰れそうにないから、そのことを伝えればいい。 理由ならある。大丈夫だ。言い聞かせ番号を呼びだした。
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