第5章

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去る者は追わず。ずっとそのスタンスで生きて来た。ひどく胸が痛むのも、虚しさに襲われるのも、いずれは時が解決してくれるだろう。 離れて行く相手を引き止めるすべはない。 今は虚勢だっていい。俺にだって、プライドはある。 「そうだな。考えてみるよ。時間はたっぷりあるしな」 「ああ」 「・・・また、面倒掛けるかもしれないが」 「気にすんな」 思いは全て飲み込んで、圭太は笑った。軽口を叩き、何もなかったように振る舞った。また連絡する。そう言って電話を切った。 大きく息を吸い込み、静かに吐き出す。 ちゃんと出来たはずだ。上手くやれたはずだ。そんな俺を褒めてやりたい。ズキズキと痛みを訴える胸を押さえ「大丈夫だ」と言い聞かせた。 涙は出て来なかった。それが唯一の救いなのかもしれない。 振られるのは慣れてる。ただ、今回は突然だったから動揺しているだけだ。そんな素振りさえ見せなかったから。・・・いや、兆候はあったのかもしれない。仕事の初日以来、修也は触れては来なかった。 「・・・なんだ」 ははっと、乾いた笑いが口をつく。 「なんだ」 俺が気付かなかっただけかよ。小さな呟きが唇から溢れる。 一頻り笑って「バカだよな」自嘲する。 優しくされて、甘やかされて、ハマって捨てられた。 「・・・それだけのことだ」 ロクでもないことばっかしてた報いを受けた。だとしたらそれは、誰のせいにも出来ない。 「・・・因果応報ってやつだよな」 なら仕方ねぇよな。圭太は天井を見上げ、そっと目を閉じた。
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