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スマホの着信音に圭太は目を開けた。チラリと机の上に置きっぱなしにしてあるスマホに目を遣り、そのまま瞼を閉じた。暫くすると鳴り止み、また再び鳴り始める。
さっきからずっとその繰り返しだ。圭太はスマホのある場所から背を向けて溜め息を吐き出した。
出る気がないなら電源を切ればいいのだが、もしかしたらと思うとそれも出来ない。
掛かるはずがないと思いながらも、特定の人物を示す着信音を、圭太は耳を澄まし待っていた。
修也と最後に言葉を交わしてから、1週間が過ぎていた。家族の前では一応、体裁を取り繕うように、いつもの自分を意識した。何でもない風を装い、気持ちを誤魔化した。ただ、誤魔化せば誤魔化す程、その反動が大きく圭太にのしかかる。
一人になった途端、世の中の全ての不幸を背負ってしまったかのように、どんよりとした顔で溜め息ばかりを吐いていた。
考えるのは修也のことばかり。思い出すのは修也と過ごした日々だ。
切なくて遣りきれなかった。何故、どうしてばかりを繰り返す。何も問題はなかった。おこがましいかもしれないが、圭太は修也に愛されていると信じていた。疑う余地すらなかったのだ。
あの時までは。
「・・・修也」
しんみりとした口調で呟いたと思ったら、圭太はイヤそうに顔を顰めた。数秒そのままの状態で固まったあと、「だぁー」と雄叫びを上げると、頭を掻き毟り、起き上がった。
さっきからずっと、軽快な音楽を奏でているスマホを睨み付け、取り上げた。
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