第5章

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「しつこい」 いい加減にしろと、怒鳴れば、それはこっちのセリフだと怒鳴り返される。 『何回電話したと思ってるのよ。家でボッーとしているだけなんだから、さっさと出なさいよね』 「俺は忙しいんだ」 『はいはい』 「流してんじゃねぇぞ?」 『じゃあ、今何してたのか言ってみなさいよ』 「・・・・・・瞑想だ」 問われて、真面目な声音で答えた。 『・・・・・・バカじゃないの?』 バカって・・・それが兄貴に対する妹の態度か。呆れた声の智花にムッとした。 「お前なぁ、もうちょっと言葉を選べ」 『・・・まぁ、いいや、冗談を言う元気があるなら出て来れるよね』 圭太の抗議は軽く流される。 「・・・俺はどこにも行かない」 『ああ、もうそういうのはいいから』 おざなりにいなされて、そういうのってどういうのだよと不貞腐れた声で呟いた。 『・・・聞きたいの?』 「えっ」 『本当に、聞きたいの?』 二度目はゆっくりと問われる。意味深な問い掛けに、顔を引き攣らせた。 当然のように圭太の自己防衛本能が働く。智花の嫌味に対抗するだけの気力が、今の圭太には残されていない。 「聞きたくない」 『そう言うと思った』 クスクスと笑う智花に、そう言わせるように仕向けたんだろと、心の中で突っ込んでおいた。 昔はあんなに可愛かったのにと、過去へと思いを馳せる。小さい頃は『兄ちゃん、兄ちゃん』といつも後を追い縋っていた。姿が見えないと大泣きして、よく母親を困らせたものだ。それが・・・年月は残酷だよなと、圭太は遠くを見つめた。
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