第5章

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「・・・沙織」 呆然と呟く圭太に、沙織は笑顔を向けた。 「やっぱり圭太だ。智花ちゃんに、今実家に戻って来てるって聞いてたんだけど、偶然だね。ここで何してるの?」 「いや、智花と待ち合わせして・・・」 「・・・あれ?圭太も?」 圭太の言葉に、沙織が目を丸くする。 「えっ?」 戸惑う圭太に、智花に夕食をご馳走する約束をしてたのだと、沙織が説明した。 「あいつ、そんなこと一言も言ってなかった」 呟く圭太に、沙織が「確認するね」と断るとスマホを取り出した。 「もしもし、智花ちゃん?沙織です」 智花と話し始めた沙織は、時折チラリと圭太を窺う。 「・・・でもね・・・うん、それはそうなんだけどね」 んーと沙織が困ったように笑う。きっとロクでもないことを言ってるに違いないと、圭太は沙織にスマホを寄越せと、手を差し出した。 沙織は曖昧に笑い、くるりと背を向けた。小声でヒソヒソと電話口で話をした後、スマホをポケットにしまい、振り返った。 「圭太、お腹空いてる?」 「・・・へっ?」 「お腹、空いてますか?」 「いや、特には」 「うん、じゃあ良かった。これから家に帰って作らなきゃいけないから、少し時間が掛かるんだ」 沙織のその言葉に、圭太は首を振った。
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