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「・・・沙織」
呆然と呟く圭太に、沙織は笑顔を向けた。
「やっぱり圭太だ。智花ちゃんに、今実家に戻って来てるって聞いてたんだけど、偶然だね。ここで何してるの?」
「いや、智花と待ち合わせして・・・」
「・・・あれ?圭太も?」
圭太の言葉に、沙織が目を丸くする。
「えっ?」
戸惑う圭太に、智花に夕食をご馳走する約束をしてたのだと、沙織が説明した。
「あいつ、そんなこと一言も言ってなかった」
呟く圭太に、沙織が「確認するね」と断るとスマホを取り出した。
「もしもし、智花ちゃん?沙織です」
智花と話し始めた沙織は、時折チラリと圭太を窺う。
「・・・でもね・・・うん、それはそうなんだけどね」
んーと沙織が困ったように笑う。きっとロクでもないことを言ってるに違いないと、圭太は沙織にスマホを寄越せと、手を差し出した。
沙織は曖昧に笑い、くるりと背を向けた。小声でヒソヒソと電話口で話をした後、スマホをポケットにしまい、振り返った。
「圭太、お腹空いてる?」
「・・・へっ?」
「お腹、空いてますか?」
「いや、特には」
「うん、じゃあ良かった。これから家に帰って作らなきゃいけないから、少し時間が掛かるんだ」
沙織のその言葉に、圭太は首を振った。
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