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「あのね、一昨日、ともちゃんから今日は鍋を食べたいって、電話を貰ったの。ともちゃん、体に似合わず良く食べるでしょ?だから、昨日の内にかなりの量の食材を買い込んで、朝の内に下準備もして来てるの。・・・だから、ともちゃんが来てくれなきゃ、困るの。あの量を一人で食べるなんて無理なの」
遮られるのを阻むように、沙織はそこまで早口で捲したてた。
「鍋?・・・このクソ暑い中、鍋すんのか?」
嫌そうに顔を顰める圭太に「圭太が一番に気にするところはそこなの?」と沙織が心底驚いた風に圭太に尋ねた。
「お前・・・ケンカ売ってんのか」
低く唸るように問う圭太に、まさかと沙織が笑う。
「びっくりしただけよ。・・・私は一人暮らしだからね、中々人数が集まって食べる料理が、家じゃ味わえないじゃない?・・・電話でともちゃんに、すき焼き食べたんだって聞いて、私も鍋が食べたくなったのよね。そしたら、ともちゃんにも鍋食べたいって言って貰えて、張り切って食材の調達をしたのよ。・・・私、凄く楽しみにしてたの」
「・・・あいつは、今日来られないんだろ?」
「うん・・・ともちゃん、仕事の都合で来られなくなったって、さっきの電話で言われたわ」
「だったら、今回は諦めて日を改めろよ」
行くつもりはないと、言外に込めた。
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