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「ほら、どんどん食べて」
沙織がニコニコと笑いながら、圭太の皿に具を乗せていく。
沙織が用意した鍋は大根おろしをふんだんに使ったみぞれ鍋だった。醤油をベースにした味付けは、野菜の甘みや旨み、出汁が効いてて、最近食欲がなかった圭太にも美味しく食べられた。
圭太もそれなりには食べる方だが、それにしたって限度がある。
「もう無理だ。お前こそ食べろよ。殆ど食ってないだろ」
「食べてるよ?」
「胃袋限界まで詰め込めよ?やだーもう食べられないーとか、ふざけたこと抜かしやがったら、ぶっ飛ばすからな」
「えっ、無理だし」
「無理じゃねぇよ。バカみたいに具を中に放り込んだ後始末をしろって言ってんだよ」
食べた端から、次々と野菜や肉を継ぎ足す鍋の中は、一向に減った様子を見せない。
「だって、もったいないじゃない」
「ある食材、全部消費しようとするから、そういうことになるんだ。程々にして、何日かに分けて使えばいいだろう?」
「一人暮らし始めてから、週末くらいしか料理はしないんだよねー。後は、コンビニ弁当かな」
「・・・お前、作るの好きじゃなかったか?」
「そりゃ、ね。誰かと一緒に食事するんなら、張り切って作るんだけどね・・・1人だけだって思うと、なんかつまんなくてさ。面倒がって作んなくなっちゃった」
だから、余っても結局捨てることになるんだよねと、寂しげに笑った。
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