第5章

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「・・・そうか」 「そうなのよ」 圭太がしみじみと呟けば、沙織は茶化したように呟き返した。 「だからね、頑張って食べて頂戴。圭太は痩せ過ぎだから、少し太った方がいいと思うしね」 「太らない体質なんだよ。少し肉を付けた方がいいとは思うんだがな」 肉と言うか、筋肉か?ムキムキにならなくてもいいが、程よく筋肉があって引き締まった体はエロくて綺麗だよな。圭太の脳裏に、修也の浅黒い肌が思い浮かび、慌てて打ち消した。 「うん、知ってる。ムカつくよねー、さらっと言っちゃうその神経」 「・・・なんだそれ」 「痩せたくてダイエットに励む世の女性を敵に回すからね」 「俺が女ならな」 肩を竦めてみせると、圭太は箸を置いた。 「もう無理だ」 腹をさすれば沙織がクスクスと笑い、コンロの火を切った。 「ビールまだ飲む?」 「いや、もうなんも入らない。これ以上、口に入れたら吐く」 「そんなに食べた?」 「ん?・・・んーどうかな?」 圭太は座椅子に背を預け、天井を見上げた。いつもよりは量が少ないのかもしれない。 「最近、食欲がなかったから、胃が小さくなったのかもな」 「どうして?」 圭太は天井から目の前に座る沙織に視線を移した。 「・・・そう言えばお前、修也に会ったよな。何、話したんだ?」 咎める口調で沙織を見る目は自然とキツくなる。だが彼女は、そんな圭太の目を真っ直ぐに見返した。
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