第5章

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「彼女はね、妻であることより、母親であることよりも、一人の女であることを選んだのよ。自分だけを見て自分だけを愛してくれる人を選んだの」 「・・・俺が放ったらかしにしていたから」 「そうね。でも、圭太だけのせいじゃないわ。あの子の元からの気質よ」 「でも、俺がもっと構ってやって居たら、沙織は浮気なんてしなかった」 そんなつもりはなかったが、圭太は沙織を庇うように母親にそう言った。 「あのね、圭太。世の中には色んな男と女が居て、色んな家庭があるわ。旦那が顧みてくれないからって理由で浮気をして、子供を捨てて家を出て行く人は一握りに過ぎないのよ?・・・分かる?あの子は圭太を捨てたんじゃない。自分のお腹を痛めて産んだ我が子を捨てたの。例え、どんな事情があったとしても、それが許されることじゃないのは、圭太にも分かるわよね?」 圭太は黙ったまま頷いた。 「事情は智花から聞いてる。でも、私からしたら、だから何?よ。絆されて圭太が彼女を許すのは勝手よ。でも、彼女の言い分を真に受けて、当然の行動だって捉えるのは間違っているからね。あの子は、自分の行動を自分で責めることで正当化しているだけ。そう言えば、圭太や智花が『あなただけが悪いわけじゃない』そう言ってくれるから、言ってるだけなのよ」
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