第5章

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容赦無く断罪する母親の言葉を聞きながら圭太は、再会してからの沙織を思い出す。風太に会いたいと言っていた沙織。自らの行動を責め、悔やんでいた沙織。それらの全てが母親の言うように正当化する為なのだとしたら・・・そこまで考えて、圭太はぶるりと身を震わせた。 ーーそう言えば沙織は、昨日食事をした時に、風太の名前を出しただろうか。 「あの子を非難するつもりはないのよ?人には人の人生があるのだから。でも、手放したのは自分のクセに、惜しくなったからと言って迫るなんて、私からしたら今更何言ってんの?って感じになるのよ」 「・・・それって」 母親は沙織が圭太にモーションをかけ始めたのをまるで知っているかのように、話をしている。訝る圭太に、母親がクスリと笑った。 「迫られてるのでしょ?智花が最近やたらと彼女の話を始めてね。何だろうと思っていたら、本人から・・・1週間前かなぁ、電話があったのよね。ご無沙汰してますって」 「沙織が?」 「そう。・・・最後には、よろしくお願いしますとか言われて、思わずキレそうになっちゃった。・・・まぁ、圭太の嫁をするのは、それくらい図々しくじゃなきゃダメかなって思ったけど、ね。本当に今更何の用?って感じかな」 「・・・・・・怒ってるんだ?」 「かなりね」 ニコリと笑う顔が何故だか般若に見えた。圭太はひくりと顔を引き攣らせた。
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