第5章

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「それは・・・乗り越えられないことなの?」 「・・・えっ」 「圭太も相手の人も、まだお互い愛し合っているのでしょ?確かにそれだけじゃ、どうしようもならないこともあるのだけど・・・二人じゃ乗り越えられないような、そんな難しい問題なの?」 「・・・それは」 圭太は俯くと、言葉を濁した。 「父さんも、母さんも協力するわよ?圭太達が諦めなくてもすむように、何だってやるわよ?」 「・・・母さん」 「圭太のそんな顔は見たくない。母さん、圭太に幸せになって貰いたい」 懇願に近い母親の言葉が、心にしみた。 散歩に出かけていた父親達と一緒に、智花も帰って来た。途中で一緒になったらしい。 圭太は玄関で出迎えると、逃さないとばかりに腕を掴み、嫌がる智花を部屋へと引きずって行った。 「言いたいことは分かってるな?」 扉を閉め、目線を彷徨わす智花を睨み付けた。 「あーー悪かったと思ってるのよ?仕事でさぁ、どうしても抜けられなくて、行けなくなっちゃったんだよね。折角、用意して貰ったのに悪いじゃない?だから、代わりに兄貴に行って貰おうかなって」 あははと、智花の誤魔化すような笑い声が部屋に虚しく響いた。 「余計な気を回すんじゃねぇよ。ややこしくなるだろ?」 「・・・でも、楽しいひと時だったんじゃないの?今日、沙織さんから電話が来たんだけど、無茶苦茶機嫌よかったよ?」 その言葉に圭太は眉を顰めた。
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