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「兄貴は今まで誰かを思って胸を焦がしたことある?欲しくて欲しくて堪らなくて、その為なら全部捨ててもいいと思えるような激しい思いを抱いたことある?」
圭太はその言葉を己自身に問い掛けて「・・・ある」と答えた。
「あるの?本当に?」
「本当だ」
圭太は力強く頷いた。修也を好きだと自覚したあの時、自分以外の奴のモノになるのかもしれないと、漠然とした不安に苛まれていたあの時にそう思った。そこまで考えて、圭太は首を捻った。ーー本当に?俺はそう思ったのか?
もうダメなんだと、落ち込んだ。芳樹の前で、思わず涙を流した。その時俺は何を考えた?諦めていなかったか?修也が幸せになるならそれでいいと。
「・・・やっぱり・・・ない?」
「どっちよ」
呆れた声で智花に突っ込まれ、圭太は困ったような顔をした。
「・・・分からない」
「兄貴はさぁ、モテるじゃない。自分から仕掛けなくても相手が寄って来るし、来るもの拒まずだからマトモな恋愛なんてしてないんじゃない?相手の人が好きだから付き合ったってのはないんじゃないの?好きだって言われたから何となく・・・でしょ?」
「・・・ああ、そうだな」
「まぁ、それが悪いとは言わないけどね。付き合っていく内に相手に対して本気になれるのなら、だけどさ」
兄貴は違うでしょ?と問われ圭太はそ苦笑いを零した。
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