第5章

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「今回の人にしたって、兄貴は本気だって言ったけど別れようって言われて、嫌だって一言でも言った?別れたくないって、縋り付いた?みっともないからとか、相手が望むのだからとか理由付けて、潔く身を引いたんじゃないの?」 心の内を見透かしたように言われ、圭太は黙り込む。 「それってさ、好きだけどそれだけだってことにならない?本気にはなったけど、結局は今までと同じ。自分を変えられなかったってこと。相手の人に対して執着しなかったってこと」 「そんなことは「ない?本当に?」 ないと言い切る前に智花によって遮られる。 「だって、別れたんでしょ?何も言わずに受け入れたんでしょ?」 それが答えじゃないの?と詰め寄る智花に、圭太は何も言えなかった。智花のいう通り、圭太は修也の別れを受け入れたのだ。 「さっきも言ったけど、それが悪いと言ってる訳じゃないのよ?相手の人には気の毒だと思うけど、それが兄貴だと思うし?だから今更、変に迷ったりする必要ないんじゃない?そんな恋愛しか出来ないんだと諦めて、そのまま行けばいいじゃない。また恋愛して、忘れるの。・・・得意でしょ?」 兄貴はね、何も捨てられないのよ。智花の言葉に、圭太は何も言い返すことが出来なかった。
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