第5章

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「いや、でもな・・・」 「でもな、じゃない」 尚も言い募ろうとする圭太を、風太がピシャリと遮る。 「おれには、父ちゃんもしゅうやもいる。大好きな二人がいるから、それだけで大丈夫だ。それに、よしくんやかなでに、おっちゃんやきさらぎも。だから寂しくない」 「・・・風太」 風太の言葉にじんと感動を覚えた圭太は手を伸ばし、風太を抱き締めた。小さな体から圭太と同じシャンプーの香りと、ほのかに甘い匂いがした。風太の柔らかな髪の毛に顔を埋め、スリスリと頬を擦りよせた。 「父ちゃん、くすぐったい」 笑い声を滲ませ、風太が身を捩る。 「父ちゃんも、風太が大好きだ」 「うん、知ってる」 風太が面映そうに頷いた。圭太がぎゅっと強く抱き締めると「いたい、いたい」と抗議の声が上がった。 「・・・あのな、父ちゃん。父ちゃんさっき、おとこどうしだから、おれがイヤなんじゃないかって、言ってたろ?」 圭太の腕の中で身動ぎ、風太が顔を上げる。 「父ちゃんが、なにをしんぱいしてるのか、知らないけど、おれはなんとも思ってないからな」 「・・・風太」 風太の言葉に、またもやジンと心を打ち震えさせた。感動に目を潤ませる圭太に向かい、風太が不意にニヤリと笑った。 その笑みに、圭太はピキリと固まったように動きを止めた。 ニヤニヤと笑みを象る風太の顔が、修也と重なるのは何でだろう? 何とは無しにイヤな予感に苛まれる圭太に対し、風太がさらりと爆弾を落とす。 「それに、おれ知ってたし」 「・・・・・・なっ」 「しゅうやに、父ちゃんはおれのヨメになったから、二人でイチャついてるときはジャマするなよって言われてたんだ」 おれ、ジャマしなかったろ?得意げに笑う風太に、圭太は驚愕の視線を向けた。 ーーあのやろう 人の悪い笑みを浮かべる諸悪の根源を、圭太は頭の中で思いっきり殴りつけていた。
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