第5章

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何が嫁だ。何が邪魔するなだ。こんな子供に何てことを言うんだ。 圭太は羞恥に赤らめた顔を隠すように右手で顔を覆った。 「あ、あのな、風太。別に邪魔じゃないからな?修也の馬鹿が言ったことは気にするなよ?大体、俺は男だからな。嫁にはなれないんだ」 「・・・テレなくていいって」 バンバンと背中を叩かれ、満面の笑みを浮かべる風太を前にして、圭太はますます居た堪れなくなり、いや、そのなと、言葉にならない声を上げる。 そんな圭太に、声音を変えた風太が「父ちゃん」と呼びかけた。 「父ちゃん。しゅうや、にがすなよ?」 圭太は顔を覆っていた手を放し、風太を見る。真剣な眼差しで、真っ直ぐに見つめてくる風太の頭をくしゃりと撫でた。 「ああ、任せろ」 絶対に逃さない。圭太は力強く頷いた。 ◆ 次の日の夜。風太を寝かしつけた後、圭太は両親と智花をリビングに呼び寄せた。 ソファに座り、圭太は目の前に座る父親と母親に視線を向ける。訝しげに見る父親と、何かを察したような顔をする母親を交互に見つめ、圭太は口を開いた。 「こんな時間から、ごめんな。どうしても話して置きたいことがあったんだ」 「・・・話して置きたいこと?」「決心したの?」 疑問を投げかける父親に、被せるように母親が圭太に問うた。 「決心?・・・母さん、何か知ってるのか?」 その問いに肩を竦めてみせながら、母親は期待に満ちた視線を圭太へと向けた。
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