第5章

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「ちょっ、兄貴?」 焦ったような智花の声が、隣から聞こえて来る。その声を手で制した。 両親に、修也との関係を告げることに、躊躇いや迷いがないと言えば嘘になる。でも、修也を逃さない為に、自分自身も逃げ出さない覚悟を決める為に、必要だと思った。 例え、受け入れられず、嫌悪感を露わに蔑まれたとしても構わない。結果なんてどうだっていいのだ。両親に話したという事実だけが重要なのだから。 親の気持ちも考えない自分勝手な息子なのかもしれない。それでも、修也を諦めきれないから。あいつが欲しいから。その為に必要なことなら、全部やるつもりでいた。 圭太は気持ちを落ち着けるように、長く息を吐き出した。 「俺には好きな奴が居る。そいつと一生を添い遂げようと思っている」 「・・・つまり、再婚するのか?そんな相手を見つけたのか」 父親が喜色満面の笑みを浮かべた。隣に座る母親も、ニコニコと笑みを浮かべる。 圭太はそんな二人に、いやと被りを振った。目を伏せ、大きく深呼吸をする。 訳が分からないと訝しむ二人を、圭太は挑むように見据えた。 「・・・再婚はしない。て、いうか出来ない。相手は男だから無理なんだ。日本の法律では認められていないから」 一気に告げた言葉に、両親は目を瞬いた。隣からは、あーあと呟く声が聞こえてきた。
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