第5章

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「男だとか女だとか、そんなのは関係ないんだ。ただ好きになった奴が男だっただけだ。あいつだから俺は全て委ねられるし、委ねて欲しいと思う。あいつの弱さも強さも全部支えてやりたいし、反対に支えて欲しい」 俺も男だ。支えられるだけじゃ満足出来ない。委ねて守って貰うだけじゃ、男としての矜持が許さない。それだけは譲れない。互いに支え合い、思い合って行きたい。愛して愛され、この先の未来を共に歩いて行きたい。 「あいつとのことを反対されても構わない。親を捨てても、俺はあいつを選ぶから」 その言葉に、父親はカッと目を見開く。 「なっ、な、な、なななに・・・なにをっ!」 怒りに言葉を失い、ぐっと拳を握り締めた。睨みつけてくる瞳からは、強い憤りを感じた。それと、圭太の言葉に傷付いているようにも見える。 だが、それ以外の・・・侮蔑や嫌悪感などの色は宿っていない。 責めるような眼差しに、圭太は視線を逸らした。 「兄貴、言い過ぎ」 智花が溜め息を零す。 「そんな風に一方的に追い詰められたら、売り言葉に買い言葉で、父さんは出て行けと、言うしかなくなるじゃないの」 話し合いたかったんじゃないの?と冷静な声に諭され、圭太は押し黙った。
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