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「母さんは逆に、智花に聞きたいな」
ずっと黙ったまま様子を見ていた母親がニコリと笑った。
「何だか母さんには智花が圭太の恋を認めて応援しているように見えるのだけど、どうなの?・・・確か、智花は別の人とくっ付けようとしていたわよね?」
敢えて沙織の名前を出さずに、母親は智花に真意が聞きたいと訊ねる。
それは圭太も聞きたかった。散々止めろ、諦めろと言っていた智花が、まるで圭太を擁護するかのようにこの場を纏めようとしているのだ。
「んーーまぁ、ぶっちゃけ反対だよ?そりゃ、兄貴がゲイでさ、男しかダメだってのなら仕方ないけど・・・そうじゃない上に散々女食い散らかしてた女好きじゃん。何をトチ狂ってるんだって話じゃない」
あまりな言いように、圭太の頬が引き攣る。ジロリと睨み付ける圭太の眼差しを、智花は肩を竦めて受け流してみせた。
そうして、でもさと、智花が諦めたように言葉を繋げる。
「でも、本気なんだなって、分かっちゃったから。・・・あんなに不誠実だった男が、その人の為に肉親を捨てるって言うんだよ?男と付き合ってるなんて言いにくいことを、両親に堂々と宣言して、諦めるつもりはないって言い切るんだもの。認めるしかないじゃない?仮にも、たった一人の兄貴だもん。妹として、協力して上げたいって思うじゃない」
何だかんだ言って、私ブラコンだからさ。照れた顔で智花が笑った。
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