第5章

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辛辣な言葉の中に隠された智花の思いが面映ゆかった。心の琴線を優しく撫でられたような、気恥ずかしくも、嬉しくて自然に頬が緩んだ。 「そっか・・・うん、智花の気持ちは分かった。・・・父さんは反対?絶対に認められない?」 主導権が母親に移り、横でむっつりと黙り込む父親を見る。 「・・・・」 何も言わない父親に、にっこりと笑いかけると「私はね」と圭太へと視線を投げた。その瞳に悪戯っ子のような笑みを浮かべて。 「母さんは、圭太に協力するって宣言しちゃったから」 「「えっ・・・」」 圭太と父親が同時に声を上げ、母親を見る。 「何だってするまで言っちゃったしね」 「「・・・母さん」」 声音の違う声がまた重なる。一つは絶望を纏い、もう一つは感激に震えながら。 「女に二言はないのよ?大事な息子が真剣に惚れた相手だもの。きっと母さんも好きになれると思うの」 だから、ちゃんと紹介してね。ウィンクと一緒にそう告げた。 「これで、父さん一人、仲間外れね」 「父さん、意外に頑固だからねぇ」 愉しげに智花と母親が話す。 「・・・仲間外れ」 呆然と呟く父親に、母親はチラリと横目を向けた。 「こればっかりは仕方ないわよね。まぁ、徐々にでいいんじゃない?」 「じゃあ、圭太の彼氏を紹介して貰う時は、父さんはお留守番ね」 「・・・留守番・・・」 「圭太ってメンクイだからきっとカッコイイわよね?母さん、楽しみ」 「・・・楽しみ?」 「うんうん。私もー」 智花と母親が横で顔を青ざめさせ、呟く父親を一人置いたままキャピキャピと、ガールズトークを繰り広げていく。
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