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ワザとだなと思った。少しずつ父親を追い詰めて行くその遣り方に、圭太は自分の為だと分かってはいたが、えげつねぇなと、嘆息する。
母親至上主義の父親が、母親に仲間外れと言われ、あたかも他の男に会うのが楽しみだと仄めかされ、その間は一人留守番だと言い放たれたのだ。
どんな反応を示すかなんて、火を見るよりも明らかなのだけれど・・・どうするのだろう?
「・・・・・・母さん」
若干潤んだ瞳で、まるで捨てられた子犬のようにしゅんとした顔をした父親に、母親はどうしたの?と惚けた顔を向けた。
ジッと見つめる中、父親はチラリと圭太を一瞥し、唇を噛み締めた。心の中で激しく葛藤を繰り広げている様が手に取るように伝わってきた。
父親が徐に立ち上がった。3人の視線を浴びながら「やっぱり無理だ。私は認めないからな」そう言い捨て、部屋を出て行った。
バタンと扉が閉まる。母親が苦笑し、智花は、まったくと溜め息を吐き出す。
「・・・ホント頑固なんだから。兄貴そっくり」
ここにきて、尚憎まれ口を叩く智花を睨み付けた。
「まぁ、そこが可愛いとこなんだけどね」
そう言ってクスリと笑う母親を、圭太と智花は若干引き気味に見る。
『可愛いのか?・・・あれが』
『知らないわよ。私に分かる訳がないでしょ?』
圭太は智花と顔を見合わせ、目だけで会話を交わした。
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