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「行ってくる」
次の日の昼間、圭太は見送る母親と風太にそう声を掛けると、一人車に乗り込んだ。
「そんなに遅くはならない。帰り支度をしておけよ?」
来た時に比べ、明らかに風太の荷物は増えていた。
車に乗るのかどうか不安になるくらいに。
「ばあちゃんに手伝って貰うから大丈夫」
「ん。ごめん、母さん。頼むな」
「うん、任せて。圭太は何も気にしなくていいから、自分のやるべきことだけ考えなさい」
「ありがとう」
二人に手を振り車を発進させた。
向かう先は、沙織の職場の近くにあるらしいファーストフードの店だ。朝早くに電話を掛け、約束を取り付けた。
智花には自分で直接話をするから何も言わないようにと言ってある。
結婚している間、傷付けてばかりいた。愛想を尽かして出て行ったとばかり思っていた沙織の本音に、圭太は誠意を持って応えたかった。ーー自己満足なのかもしれないが。
車を店の駐車場に停め、時計を見た。約束の時間までまだ10分あるのを確認し、車を降りた。
「圭太」
呼び掛けられ振り向く。そこには再会した日に着ていた制服を身に纏った沙織が立っていた。
「えっ?あれ?まだ時間あるよな?」
間違えたか?と焦る圭太に沙織は被りを振った。
「ううん、大丈夫だよ。圭太っていつも約束の時間より早く来るでしょ?だから、早めに来て待ち伏せしてたんだ」
沙織は、そう言うと助手席の扉を開けた。
「テイクアウトしたから、車で食べながら話そ」
ほんの少し寂しそうに笑うと車に乗り込んだ。
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