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「謝らないでよ。ムカつくから・・・自分から手を離したクセに未練タラタラで、男と付き合ってるなんて聞いて焦ってモーション掛けるとか、ホント情けないよね」
沙織は唇を噛み締めると、食べかけのバーガーを紙袋に入れた。
「ちゃんと振ってくれるのでしょ?その為に呼び出したんだよね」
「・・・・」
「未練が残らないように、ちゃんと振ってね。じゃないと、また邪魔してやるからね」
茶化したように戯ける沙織の顔は、今にも泣きそうに歪んでいた。
「・・・俺は今、好きな奴がいる。そいつと一緒に生きて行きたいと思っている。沙織の気持ちは嬉しいが、気持ちに応えるつもりはない。仮に、そいつとのことがなくても、きっと俺は同じ結論を出している」
沙織の目に涙が浮かんだ。流れ出すのを必死に堪える沙織が痛ましかった。
「沙織はあの時、別々の人生を歩むことを選んだ。前にも言ったが、お前が出したその結論は正しい。あのまま一緒に居ても、俺は沙織を幸せにはしてやれなかったからな」
「・・・圭太は変わったわ。今なら大丈夫じゃないの?」
縋るような眼差しを向ける沙織に、首を振った。言えば傷付けるであろう言葉を敢えて口にする。
「お前じゃダメなんだ」と。
狂おしい程に求めるのは修也だけだ。それ以外は要らない。ただ、修也だけが欲しい。
拒絶の言葉に沙織がキツく目を閉じた。瞳に溜まっていた涙が零れ落ちる。透明な雫が後から後から溢れ、顎を伝い洋服に黒い染みを作るのを、圭太は黙ったまま見つめていた。
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