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車を駐車場に停め、二階にある事務所へ向かった。扉に貼り付けてある休業の文字を、眉根を寄せて見た。
「・・・休業って」
鍵を開け中に入る。事務所の中は閉め切られていた部屋特有の、ムッとした空気が漂っていた。
「しゅうや、ただいまー」
扉を開けた途端、中に滑り込んだ風太が大きく声を掛ける。キョロキョロと辺りを見渡し、不安気な顔で圭太を見上げた。
「・・・父ちゃん、しゅうやは?」
圭太は室内をざっと見渡したあと「修也の部屋に行ってみよう」そう言って渡されている合鍵をかざした。
「うん」
二人で連れ立って部屋を出て、そのまま隣にある扉まで歩いた。
修也の部屋の中も、暫く誰も居なかったように篭った空気が漂っていた。軽く室内を見て回った。その時、ベットの上に無造作に置かれたスマホを見つけた。
電源が入っていないらしく、画面は真っ暗になっていた。
(そりゃ、電話も通じないよな)
スマホを掴みポケットに入れる。ツンと服の裾を引っ張られ、視線を下に向けた。
「・・・父ちゃん」
泣きそうな顔をする風太を安心させるように、圭太は笑ってみせる。
「風太、芳樹さんの所へ行ってみよう。何か知っているかもしれない」
見上げる風太に頷き、その体を抱き上げる。小さな手がぎゅっと圭太にしがみついて来た。
「大丈夫だ」
自身に言い聞かせるように、圭太は呟いていた。
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