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「やぁ、いらっしゃい。随分久しぶりだね」
「すみません、実家に戻っていたもので・・・お久しぶりです」
「そうなんだ?・・・風太も久しぶりだね」
喫茶マロンのマスターでもある芳樹は、相好を崩し風太を見る。風太は身動ぎ圭太から降りると芳樹の元へと走り寄った。
「よしくん、だっこ」
「うんうん」
「こら、風太」
「いいんだよ圭。こうやって風太に甘えられるのが僕は嬉しいんだから・・・ねー」
「ねー」
風太と芳樹は互いに顔を見合わせ、楽しげに言い合った。
「それより、何か食べるかい?風太はお腹空いてない?」
「すいたー」
「じゃあ、よしくんが腕によりを掛けて作ってあげるよ。風太は何を食べたい?」
「オムライスー」
「了解。作るから、圭のとこで待ってて」
芳樹はスリスリと風太の頬に頬擦りをすると風太を下ろした。目尻を下げ風太を見つめる目は優しくて暖かい。
「圭、座って。同じものでいいかい?」
「はい」
「よしくんのオムライスすきー。たのしみ」
「風太にそう言って貰えると嬉しいよ」
芳樹は待っててねと、圭太達に告げると奥の厨房に引っ込んだ。
芳樹は何も知らないのかもしれない。それとも知っていて何も知らない振りをしてくれているのか、圭太には分からなかった。
それでも普段と何も変わらない芳樹を見て、圭太はホッと胸を撫で下ろした。
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