418人が本棚に入れています
本棚に追加
圭太は一人車に乗り込み、芳樹から渡されたメモ用紙を眺めた。見知らぬ11桁の番号。その番号の主に一人だけ心当たりがあった。
スマホを取り出し番号を入力する。緊張しているのか、やたらと喉が渇いた。お茶でも買っておけば良かったと思いながら発信した。
暫く鳴らし続けると留守番電話に接続された。圭太は電話を切って、また掛け直す。留守番電話に伝言を残すつもりはなかった。それでも通じて欲しくて何度も繰り返した。
ただひたすら出てくれと祈りながら。
5回繰り返した後、漸く不機嫌な声での応対があった。地の底から響くような声で『誰だ』といきなり問われる。
警戒も露わなその声には聞き覚えがあった。
「やっと出た」
ホッと息を吐き出した。
「進藤の番号もやっと手に入れたよ」
結局、番号の交換はしないまま、あの時も別れた。
『・・・・・・小原か?』
電話の向こうの声音が幾分か柔らかくなる。
「ああ、悪いな。イタ電並みに電話した」
『この番号は親しい者にしか教えてなくてな。知らない番号だったから出なかったんだ』
だから初っ端から『誰だ』だったんだなと納得する。
『どうやってこの番号を手に入れた?』
「スマホを置きっぱで、失踪した男の連絡先になってるぞ」
『・・・あいつは失踪してたのか』
知らなかったと、昴が苦笑する。
『やたらと電話が掛かって来てないかと確認してくるからおかしいとは思ったんだ』
全くあいつはと、呆れたように呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!