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「修也が別れ話を切り出した日からずっと考えてたんだ。諦めようとも思った。諦められると思った。振られるのなんていつものことだ。今はキツイけど、いつかは修也を忘れて他の誰かを好きになるだろうし・・・大丈夫だと思ったんだ」
でもと呟き、圭太は自分の左胸を掴んだ。
「・・・でもな、ダメなんだよ。修也のことを思うだけで、胸が痛いんだ。痛くて痛くて、どうしようもなくて・・・あいつが誰かのものになるって想像するだけで、息が出来ないくらい苦しくなるんだ。なくしたくない。失いたくない。・・・俺にとって修也はただ一人の存在なんだ」
修也の傍は居心地が良くて、いつも笑っていられた。包み込むような優しさが、熱く焦がれるような想いが、心を満たしてくれていた。
「俺はあいつに貰ってばかりで何も返せてないんだ」
修也に対する想いも、肝心なことは何一つ伝えてない。きっと分かってくれる筈だなんてそんな訳ないのに、伝えることを怠った。
「もう一度やり直したい。今度は出し惜しみせず、あいつに全身で向かって行きたい。ーー愛してるんだ」
この想いを伝えたいんだ。圭太は祈るように告げた。
『・・・随分と情熱的だな。俺が一瞬、口説かれてるのかと勘違いしそうになった』
「・・・なっ、違う」
焦る圭太に『ああ、分かってる』と笑い混じりの声が届く。その声に揶揄われたのだと気付いた。
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