第5章

148/178
前へ
/599ページ
次へ
「お前・・・性格悪いぞ」 『安心しろ。自覚済みだ』 そう言って笑う昴に溜め息を吐き出した。 『・・・小原の気持ちは分かった。お前も難儀な男に惚れたもんだ』 「そんな風には思わないから心配するな」 『・・・そうか。・・・修也は俺の部屋に転がり込んでる』 「場所を教えてくれ。迎えに行く」 修也の居場所が分かりホッとする。 『・・・・・・今からか?』 何故か躊躇する昴に違和感を覚えた。 「・・・?ああ、もちろん今からだ」 『そうか・・・』 昴は呟くと、そのまま黙り込んだ。その沈黙に胸が騒ぎ、妙に気持ちが急いだ。 なんだ?と問い返す前に昴が口を開く。 『・・・明日でよくないか?』 「えっ?」 『そうだ、そうしろ。慌てなくても修也は逃げない。明日ゆっくり来ればいい』 まさか日を改めろと言われるとは思っていなかった圭太は「・・・なんでだ?」と不審げに問う。 『なんでって・・・なんでだろうな』 「進藤?」 うーんと昴が唸りを上げる。知らず圭太は拳を握り締めた。 どうすっかな・・・小さな小さな呟きが耳に届いた。ドキリと胸が騒ぐ。イヤな予感に苛まれ眉間に深い縦皺が寄った。 今、迎えに行っちゃいけない理由があるんだよな。・・・もしかして、あいつにはもう誰か違う奴が居るのか?ーーーーいや、違う。大丈夫だと、圭太は思い浮かんだ可能性を否定した。 「・・・進藤」 低く昏い声で、電話の向こう側にいるだろう男の名を呼んだ。
/599ページ

最初のコメントを投稿しよう!

418人が本棚に入れています
本棚に追加