第5章

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『時間は6時。駅前で待ち合わせだ』 昴の言葉を受けて、圭太は昴が住む街へと車を走らせた。時刻は午後5時。余裕で間に合うだろう。 圭太は逸る気持ちを必死で抑えた。 夕方5時。駅前は学生で賑わっていた。近くに高校があるのかもしれない。ブレザーの制服に身を包み、あちらこちらで愉しげに話しをしている。 車の中から辺りを見渡す圭太の目に、通りの向こうから来る見覚えのある姿が映った。 ジーンズにブレザー。ラフな格好をした修也が歩いて来る。 (修也) 久しぶりに見る男の姿に圭太の胸が跳ねる。強く鋭い眼差しに彫りの深い顔立ち。厚めの唇に、ああ、修也だと、感慨に耽る。 修也は誰かを探すかのように辺りへと目を向ける。そこに、すっと黒い車が滑り込んで来た。フルスモークの見るからにヤバそうな車が、修也の目の前に停まった。 何かトラブってるのか?圭太は眉を顰め様子を窺うと同時にシートベルトを外し、何かあれば直ぐにでも駆けつけられるようにした。 助手席の扉が開き、男が一人降り立つ。いかにもな服装をした男は修也に向かい軽く頭を下げた。 その様子を見て、圭太は目をパチクリとさせた。 (知り合いなのか?) ジッと見つめる先で、男は後部座席の扉を開く。修也が乗り込もうとするのを手で制し、何事か囁くと修也が二歩後ずさった。 ・・・何だ? 訝しむ圭太の視線の先で、後部座席から男が一人出て来た。
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