418人が本棚に入れています
本棚に追加
真正面から見た男の眼差しは思った以上に鋭く、まるで飲み込まれそうだと思った。醸し出す雰囲気が、一般人のそれとは違うことに気付く。
目を逸らしたいのに逸らせない。まるで引力があってそこに引き寄せられるようだ。
それとは裏腹に、相手に対して畏怖の念が沸き起こる。ごちゃ混ぜになる心に圭太は混乱した。
「圭太」
咎めるような口調で修也は呼ぶと、スッと体をズラし圭太の視線を遮るように立ち塞がった。
まるで見るなとでも言いたげな顔をして。
そんなに俺に見られたくないのかよ。取られるとでも思ったのか?そりゃ、見惚れたのは事実だけど・・・生憎と俺は男に興味はないんだよ。
苦々しい気持ちで修也を睨む。胸がツキリと痛んだ。
男が何事かを修也に囁いた。それに対し「うるせぇ」と修也がいなした。
その親しみのある口調と声音に、またツキリと胸が痛んだ。
「圭太、お前が何でここに居るのか分からねぇが、ここはお前が来るような場所じゃねぇ。今直ぐ帰れ」
修也の拒絶が圭太の胸に深く刺さった。
じゃあ、お前はどうなんだ。そう叫び出したくなる気持ちを必死に押し込めた。
泣きそうだった。修也を取り返したくて、ここまで追って来た。冷たくあしらわれることも、ある程度は覚悟していた。
それでも、実際にそんな風に言われれば、圭太だって傷付くのだ。
チラリと修也の肩越しに男の顔が覗いた。勝ち誇った顔をされたら、きっと立ち直れない。そんな自分に自嘲し、圭太は視線を背けた。
最初のコメントを投稿しよう!