第5章

156/178
前へ
/599ページ
次へ
「どういう意味もねぇだろうが!別れた途端、そいつにモーション掛けやがって・・・違うなんて言わせないからな」 「モーションて・・・」 呆れた声を出す修也の胸倉を掴んだ。 「俺が、何も知らないと思ったら大間違いだからな。お前が昔そいつに惚れてて、告って振られたこともちゃんと知ってんだからな。久しぶりに会って惚れ直したか?やっぱりこいつがいいって思ったのか?・・・人の気持ち弄びやがって、ふざけるなよ!」 息も荒く修也を責めたてる圭太に、修也が絶句する。修也の真意が知りたくて目の中を覗き込めば、その瞳には泣きそうに顔を歪める己自身が映っていた。 そんな自分に歯軋りした。 「俺の心ん中にドカドカ入って来て居座りやがったクセに、昔好きだった男が現れただけでポイかよ。お前が・・・お前が全部言ってくれてた気持ち・・・全部嘘だったのかよ」 一生をくれるって言ったじゃないか。呟く言葉が掠れた。眦から涙が零れ落ち、圭太は見られたくなくて咄嗟に俯いた。 泣きたくなんてなかった。負けを認めることになる。圭太の中でそれは、修也を諦めると同義だったから。認めたくなくて、圭太は袖口で乱暴に目元を拭った。
/599ページ

最初のコメントを投稿しよう!

418人が本棚に入れています
本棚に追加