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修也は、そんな圭太を神妙な顔で見つめたあと「・・・成る程」と呟いた。その妙に冷静な声に苛ついた。
「何が成る程だよ!」
「そう、怒るな。お前の怒ってる理由が分かったから、成る程って言ったんだ」
「・・・否定しないんだな」
肯定も否定もしない。暗に察しろってことかよ。圭太は投げ遣りな気持ちになった。
「・・・他には」
「・・・他?」
圭太は怪訝な顔を向ける。
「あと、知ってることは?全部吐き出せ。小出しにされるのは面倒だ」
そんな言い方があるかと、睨み付けた。
「ほら、聞いてやるから言っちまえ」
修也はあくまで余裕を崩さない。顔には薄ら笑いさえ浮かべている。必死になって修也に縋り付く圭太とは対照的なそんな修也の態度に、圭太は絶望的な気分になった。何を言っても、どうやっても想いは届かないのだと、突き付けられたような気がした。
フラリと圭太は後ずさった。
「・・・圭太?」
「・・・・・・もういい」
圭太は小さく呟いた。
もういい。もう分かった。振られるのは慣れてる。
いつものことだと、圭太は被りを振り、修也から二歩三歩と後ずさった。
まだ間に合うと思った。自分から歩み寄りさえすれば、また元に戻れると思っていた。浅はかな自分の考えに笑えた。
もうここには用がない。俺は俺の場所に帰る。・・・これ以上、無様な姿を見られたくはないから。
痛みを堪えるように一度だけ強く目を閉じて、圭太は踵を返した。
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