第5章

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「圭太!」 逃げるように、その場を去ろうとした圭太の腕を修也が掴んだ。 「なっ・・・離せよ!」 「逃げんな、圭太!」 「うるさい、うるさい、うるさい。人の気も知らないで、勝手なことを言うな」 「お前は何の為にここまで来たんだ。それでいいのか?」 圭太はその言葉にカッとする。 「お前がっ・・・お前が俺を拒絶したんだろっ」 「それで諦めるのか。だとしたら、その程度の気持ちしかないってことだよな」 圭太は腕を振り払い、修也の頬を叩いた。 「お前に何が分かる!」 「分からねぇよ。俺は何にも言われてないからな」 叩かれたことに頓着する様子も見せず、修也が圭太を見つめる。 「圭太、お前はどうしてここに来たんだ?」 どうしてここに来た?修也の問い掛けに圭太は俯き、唇を引き結んだ。 (俺は・・・) 「他の男との間を疑って、詰りに来たのか?」 「違う」 「・・・綺麗さっぱり終わらせに来たのか?」 「違う!」 圭太は激しく被りを振って否定した。 「・・・じゃあ、何でだ?」 何でって・・・そんなの決まってる。修也を詰りに来た訳でも、終わらせに来た訳でもない。ただ・・・修也に会いたかった。修也と話がしたかった。自分の気持ちを伝えて、修也とまた遣り直したかった。 それだけだ。 ただ、それだけだったのに・・・俺は何一つ出来なかった。 「・・・圭太」 優しく促す声に顔を上げた。そこには、声に負けず劣らず優しい目をした修也が、圭太を見つめていた。
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