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「圭太!」
逃げるように、その場を去ろうとした圭太の腕を修也が掴んだ。
「なっ・・・離せよ!」
「逃げんな、圭太!」
「うるさい、うるさい、うるさい。人の気も知らないで、勝手なことを言うな」
「お前は何の為にここまで来たんだ。それでいいのか?」
圭太はその言葉にカッとする。
「お前がっ・・・お前が俺を拒絶したんだろっ」
「それで諦めるのか。だとしたら、その程度の気持ちしかないってことだよな」
圭太は腕を振り払い、修也の頬を叩いた。
「お前に何が分かる!」
「分からねぇよ。俺は何にも言われてないからな」
叩かれたことに頓着する様子も見せず、修也が圭太を見つめる。
「圭太、お前はどうしてここに来たんだ?」
どうしてここに来た?修也の問い掛けに圭太は俯き、唇を引き結んだ。
(俺は・・・)
「他の男との間を疑って、詰りに来たのか?」
「違う」
「・・・綺麗さっぱり終わらせに来たのか?」
「違う!」
圭太は激しく被りを振って否定した。
「・・・じゃあ、何でだ?」
何でって・・・そんなの決まってる。修也を詰りに来た訳でも、終わらせに来た訳でもない。ただ・・・修也に会いたかった。修也と話がしたかった。自分の気持ちを伝えて、修也とまた遣り直したかった。
それだけだ。
ただ、それだけだったのに・・・俺は何一つ出来なかった。
「・・・圭太」
優しく促す声に顔を上げた。そこには、声に負けず劣らず優しい目をした修也が、圭太を見つめていた。
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