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「怒るな、圭太。お前が追いかけてくれて嬉しかったんだ。もしかしたら、お前は俺が思う程は好きではないんじゃないかと、不安だったから」
「・・・修也」
「だから、俺を選んでくれたんだって思ったら暴走した。所謂、愛の為せる仕業だな」
不安にさせて悪かったと、圭太は謝ろうと思った。気持ちは同じだと、言わなくても分かるだろうと、伝える努力を怠ったことは事実だから。でも、今の一言でそんな殊勝な気持ちは消え去った。
代わりにペシンと頭を叩いた。眦を吊り上げる圭太に、修也は幸せそうな笑みを向けた。
「俺は怒ってるんだ」
「悪かった、悪かった」
言葉だけの謝罪だということは、顔を見れば分かる。呆れて溜め息を吐こうとして、圭太はハッと気付く。
このまま色んなことがなし崩しになかったことになりそうだが、何にも解決していないじゃないか。
「・・・・・・お前、新しい男が出来たんじゃねえのか?」
元はと言えば、それが原因でおかしなことになったのだ。誤解だと修也は言っていたが、何が誤解なんだ?圭太はチラリと修也の背後を窺った。
そこには、静観を決め込んだらしい男が一人、意味深な笑みを浮かべて立っていた。
その愉しげな表情に違和感を覚えた。修也が違う男に愛の言葉を囁いているのに、笑っているのだ。
まるで自分には関係のない顔をして。
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