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「ああ、それな」
修也の溜め息混じりの呟きに、圭太は修也へと視線を戻した。
「それには俺もやられた。余計に訳が分からなくなって一瞬、混乱しかけた」
「俺は今も混乱している」
「だろうな・・・あのな、圭太。先ず根本が間違ってるんだ。だから、おかしなことになってるし、混乱するんだ」
「・・・根本?」
間違ってるってなんだ?おかしなことって?圭太は眉根を寄せて修也を見る。
「良く聞けよ?・・・俺は確かに美人が好きだ。好みから言ったら、九条もタイプの内に入るのかもしれない。でも、出会ってから何年も経つが、あいつに恋愛感情を抱いたことは一度もないし、これからもない」
キッパリと言い切る修也に目を丸くする。
「だ、だって・・・」
「だってじゃない。大体、あんな得体の知れない奴、俺の手には負えない」
「で、でも・・・」
「でも、なんだ?」
「・・・・」
俯く圭太の顎を掴むと、顔を上向ける。視線を合わし「何が引っ掛かってんだ?」と訊ねた。
「変に自分の中に溜め込むな。ロクなことにならねぇから」
圭太は修也から目を逸らすと、背後に建つマンションに目を向けた。
「・・・飲みに行くんじゃなかったのか?」
ここはどう見ても普通のマンションで、店じゃない。
「・・・ああ」
圭太の言いたいことを理解したらしい修也は頷いた。
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